全国建設青年会議
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全国建設青年会議 第14回全国大会

全国建設青年会議 パネルディスカッション第一部
「将来のインフラ整備に向けて」






  パネリスト
  脇 雅史 氏 (参議院議員)
  佐藤 勇 氏 (宮城県栗原市長)
  見城美枝子 氏(青森大学教授)
  大沼武彦 氏 (実行委員長:東北建設業青年会副会長)

コーディネーター
  竹村公太郎 氏(首都大学東京客員教授、建設産業専門団体連合会理事)


脇先生 

 一貫して40数年社会資本整備・公共投資をやってきまして、この分野に携わる中で申し上げるまでもなく公共事業は国民生活に必要不可欠なものである
これをいかにうまくやっていくかということが私自身の課題である。この課題は役人のときであれ、国会議員のときであれ変わらない。
 
特に国会議員になってからは、ここにこられておられる皆様建設産業界の代弁者という思いでやってきました。それに伴って考え方やモノの見方もかわってきました。
 実際に予算をとってきてそれを現場にモノにかえていくという最後の仕上げの部分、言わば一番大事な部分を皆さんがやっていて、その部分がうまく機能しないと結局絵に描いた餅になってしまう。

 最近ではもっぱら建設産業という目から見ていますが、しかし世の中の一般市民の目から公共事業をみるとかなり見え方が違うんだろうと思う。

 最近ここ20年くらいは見え方が少し偏見に満ちている、誤解が多く正しく理解されていないということが非常に多い。

 建設産業がうまくいくだけではなく、社会資本整備に対する国民の意識をしっかりとしたものに変えていくことが私にとって大きなテーマである。

 

佐藤市長

 あれもこれもから、あれかこれかしか出来ない。
 新たな産業を作ったりするのではなく、作ったものをどう維持・管理するかを考えていかなければならない。
 
栗原市には数多くの橋があり、50年以上経過した橋が12ある。時間をかけて補修の予算計画をたててきたが、今回の事業仕分けでどうなるかわからなくなってしまった。
 予算が限られているのだから補修・修繕・点検・維持管理へ目線をかえていただくことが課題。
あれもこれもから、あれかこれかへ転換してほしい。
 特に震災の際に驚いたことは、業界の方々の想像以上の手助けでした。地元の業者のみなさんの団結に感謝し、地域間での連携の大事さを感じました。

 そして整備局、特に河川局の対応の早さ、素早さに驚いた。市長の直通のケータイで連絡を取り合い、朝昼晩、あらゆる場所から現在の状況、どう対応するか等の経過説明の速さは凄かった。

 必要なときに最大限の役割を果たす取り組みの役割の重要性を感じた。

 

見城美枝子 氏

建築に環境を含めて日本の風土にあった住居がビル化していく中で、間違っていかないか思いながら過ごしている。
 建築に対して箱物という言い方が嫌いで失礼だと思う、差別化・区別化されてしまっている。箱物というだけで巨悪が潜んでしまう。
 人がなんのために建物を建てたのかということを考えればそんなことは言えないはずだ。

 現場に行かずにして語るな。現場主義、自ら足を運び自分の目で見て判断するようにしている。テレビからの情報だけで判断してはならない。

 『ダム=無駄』と言葉で作ってしまうとインパクトがあるが、国民にとって本当にそうなのか?現場に行って現場の声を確かめなければわからない。

 

大沼実行委員長

これから限られた仕事の中で従業員を維持しながらどう頑張っていくか
 東北建設業青年会は
10年前から建設業の負のイメージを大きく払拭しよう、公共事業の必要性を訴えて行こうという活動をしていたが、10年経っても公共工事の必要性訴えていくという命題はかわらないなと感じた。
 
建設業の正しい理解ということでPR用のパンフレットを作成し配布したり、首都圏に対して地方ではこんなに頑張っているということを伝えるためにラジオでの啓蒙活動を行ったり、工業高校または専門学校へ我々のやっている仕事の必要性を理解するための資料を配ったり、環境維持のためのボランティア活動も行っております。
 5、6年くらい前、子どもが被害者になる事件が続き、地域の子どもは地域で守ろうということで色んなNPO団体、PTAなどが活動したときに、我々建設業というのは田舎の山奥まで現場があって、よくその辺を走り回っているということもあり、我々が一番役に立てるんじゃないかということで子どもパトロール隊というのを東北6県全部で結成し、パトロール活動を行った。

 ある学校をサンプルにして、我々の目から見た子ども達の通学路の危険箇所を記した防災マップを作成し提供したりしている。
 建設産業ですので仕事の利益や社員の給与・雇用を守るということも大事だが、CSRが叫ばれる前から地域の目立たないところでボランティア活動や地域貢献をしているという自負がある。


竹村 氏
建設業の負のイメージとはなんだろうか。


佐藤市長

昔から建設業界の皆様は車も高級車に乗っているというイメージがあったのではないか。最近ではそのようなこともないが最初の頃のイメージがあり、その感覚が負のイメージに繋がっているのではないか?


見城 氏

1つは建築廃材の9割以上が不法投棄して山に捨てているイメージがある私腹が肥えたというイメージをどのように撤回していくのか。
 現在環境問題が政府、世界に向けて配信していく日本にとってそれを説明出来なければ払拭出来ない。

 深く、根強く何度も何度も国民にプリントされているイメージとして、日本の戦後の昭和31年から土建国家になっていった。おかしな建物でも建てれば商売になるような、ロクなものも建てなかったということがあった。
 昭和43年住宅総数が総世帯数を上回っていて、良い物ばかりをきっちりつくったわけではなく、何かチャンスがあれば建てて建てたあとは関与せず、そこで壊したものは捨ててしまえばいいというそのような構図がその頃からずっとあった。

 建設・土建・公共事業といったものが国の富を握っている、動かしているというイメージがしっかりついてしまった。

 外車を乗り回すイメージ、癒着のイメージがあり、バブルがはじけ平成の不況でこのような状況と言われても国民はなんと答えていいかわからない。

 日本の消費社会をある部分はしっかり担って日本の消費を上げてきた。内需を拡大してきたというメリットと、国民に対して勝者のイメージ、派手でどこからお金が出てきてどこに流れていくのかわからないイメージがあり、そこにもしかしたら不法なというイメージが張り付いているイメージがあるのではないか。

竹村 氏
不法投棄について現状は?

大沼氏

現在では不法投棄はあり得ないというのが普通の考え方、考えられない。あるとすれば下請が3次4次までなったときに悪質な業者が入っていたという可能性くらいなのでは?

 

竹村氏

非常に難しい問題を含んでいる。
 一般の方の目線だとそのようなイメージを持っていて、さらにマスコミからそのようなレッテルを貼られるとそれを信じてしまう。

 

脇先生

一面の真理であって全体の真理ではない。
 まず1つに建設産業は数が多い50万社、600万人が働いている。10人いたら1人は悪い人がいる100人いれば1人極悪人がいる。ほとんどの人が悪くないのにそれだけの割合でいるだけで相当目立つ存在になる。それにより建設業界全体が悪いと思われる。
 そして建設産業の現場そのものが割と目につく場所が多く、一般市民に見られている。 現場というのはあまり綺麗なものではないし、不快な音がしたりするもので建設廃材や廃棄物が沢山出てくる。
 このような産業の特色によって悪いイメージを持たれてしまっているのではないか。
 職人は良い仕事をしようとする。金なんかもらえなくても良い仕事がしたいという良い部分もあるのに悪い部分に隠されてしまう。悪いイメージには作られた部分がある。
 20年くらい財政状況が悪い中で、公共事業を悪者にしたてようという動きがありそういう勢力に利用されてしまった。そして利用される要因がたくさんあってしまった。
社会資本自体に悪さは何もない。もっと良くしよう、もっと快適にしようとするための仕事がいらないということはない。
 コンクリートから人へという言葉で絡みとろうとするのは良くない。

 

竹村 氏
 発注者としてどのようなことを心がけているか?


佐藤市長

あれもこれもからあれかこれかというのは財源の問題でして、限られた財源の中でも社会資本整備は絶対やらなければならない。
 限られた中で優先順位をつける、最低限のことはしなければならない
予算は決まっているので、より安くという気持ちはどうしてもある。
 今回の震災で地元の業者の方が危険が伴う現場での仕事を目の当たりにして、大切にしていかなければならないと思った。

 
竹村氏
 公共事業の必要性を訴える活動について。


大沼氏

東北全体、そして県、市、個人の会社といったように取り組んでいた。一企業で出来ることは限られているが、県や東北といったスケールにあった活動を行っていた。

 

竹村 氏
 その活動によって変わっていったことは?


冨田(東北−青森)

従業員の意識がかわったように思います。最初は団体活動として始めていたが、現場などでも独自に取組み始めた。
 ある地区の会社では報道機関の方から取材にきたということがありました。

 それがイメージアップに繋がっていけばと思っています。



竹村氏
 これから広報が大事になるがどういうことをしていくべきか?


脇先生

子どもの安全パトロールといった地道な活動は素晴らしい活動で、続けていくべき活動である。これ以上企業のみなさんに頑張れっていうのは酷なことであって、頑張らなければいけないのは政治と行政なのだと思う。
 財政が厳しい状況の中、市役所等で削っているからお前らも我慢しろということをやっていくといいことはない。それではジリ貧になっていく。

 無駄を削っていくのは確かに大事だが、しかし国全体がそれをやるとどうにもならない。
政治と行政もダイナニズム取り戻すべき。
 我慢して乗り切ろうというのをやめるべきで、お金がないから切り詰めようという考えでは追い詰められていくだけ。
いつまでたっても同じやり方でしか考えない。
将来に向けて新しい状況を考えていくべき。

 
竹村 氏
 地方の建設業がすべきこととは何があるだろうか?


見城氏

負のイメージの流れをそこで終わらせるのではなく、そのあとに続く発想を仕掛けるべき。建築廃材を活かすようにして工夫する等。
 利益にならないと思うがこれからの状況を考えたときに、最終的にプラスになって自分に返ってくると思うからぜひ実行すべき。

 国が苦しい状況で建設業は何をしていくべきなのか、そういったことを考えていくことが大事。

 安易に他産業に参入するのはいかがなものか。

 自動車産業のためにインフラが出来て、農業のためにインフラが出来ないのか?というような視点を持って働きかけてほしいと思う。

 
竹村 氏
 最後に何か一言お願いします。


大沼氏
 中々他産業に入ってもうまくいかない。ただ他産業に参入するだけではなく、大きな規模で他産業の中で建設業のノウハウを活かす方法を考えるべき。 


見城氏
 苦しいのは建設業だけではなく他の産業も同じ。
 苦しいときは質が落ちてしまうので、ここで質を落とさないように頑張ってほしい。業界が生き残るのに大事なポイントになる。

 

佐藤市長
 都市と地方の格差が広がっている。必要な公共事業というのを国民に理解してもらわなければならない。
 やれることは色んなことがある、アウトソーシングをしていこう。
 可能性はたくさんある。


脇先生
 建設産業というのはどうしても受身で、仕事が出てこないとどうしようもない。
 建設産業は必ず必要な産業、良いインフラをつくるのに技術は必要。
優れた技術を維持し、さらに技術を磨いて自信をもってやってほしい。
 そのためにも安易に他産業に参入してほしくない。

 政治行政がしっかりしないといけない。

 みなさんが胸をはって働ける環境を作れるように頑張っていきたい。

                         以上、第1部パネルディスカッション終了